


武蔵国と相模国が境を接する横浜の地には、奈良時代、八世紀後半頃に仏教文化がもたらされました。以来、各時代にわたり数多くの寺院が建立され、“みほとけ”に対する祈りが捧げられ、仏教の信仰が根付いてきました。
本展は横浜市域に伝わる仏像を総合的・体系的に紹介するはじめての展覧会です。半世紀におよぶ文化財調査の成果にもとづき、平安・鎌倉時代の仏像を中心に、新発見・初公開の“しられざるみほとけたち”を紹介し、横浜の仏教文化の実像にせまろうとするものです。
時代を超え守り伝えられてきた横浜の仏像は、地域色豊かな独特の個性を有する像から都風の洗練された像までさまざまです。人々の信仰や美意識などの変化を反映し、時代ごとに多彩な姿をみせる横浜の仏像を紹介します。

![横浜市指定 阿弥陀如来坐像(頭部)平安時代 向導寺(泉区)[横浜市歴史博物館管理]](images/butsuzou_03.jpg)
展示構成
つくられ、まつられ、おがまれた
横浜の歴史を一望
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Ⅰ仏像史の曙光飛鳥時代・奈良時代6世紀なかば、百済から伝えられた仏教を日本人が受け入れるために仏像は重要な役割をはたしました。7世紀後半に律令体制の基礎が築かれると、横浜市域も武蔵国と相模国の一部となり、やがて国ごとに寺を作り、仏像・経を信仰せよとの詔も出るので、この地域でも仏像が造られたかもしれません。横浜に流入した時期は不明ですが、鶴見区・松蔭寺如来坐像、金沢区・龍華寺菩薩坐像は飛鳥・奈良時代の仏像の姿をみせてくれます。
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Ⅱ古代仏の個性平安時代1奈良時代末期にあらわれた木彫は霊木信仰とも結びつき、各地に一木造りの仏像が広がりました。平安前期にさかのぼる仏像は東国には少ないのですが、その時期の特色は平安後期にも残ります。南区・弘明寺十一面観音菩薩像のような、表面に水平方向の丸ノミ痕を意図的に残す鉈彫りはそのような地方仏の代表です。ほかにも個性豊かな平安仏から、この時代の横浜市域に生きた人びとの活動と仏教信仰をうかがうこともできるでしょう。
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Ⅲ王朝仏への憧憬平安時代211世紀前半の都で仏師定朝(?~1057)は日本の仏像の典型的な様式(和様)を完成し、木彫の新技法も確立して、各地の造像に大きな影響を与えます。横浜市域も例外ではありません。いまは壊れた状態の泉区・向導寺の阿弥陀如来像は早い時期の作例です。金沢区・龍華寺阿弥陀如来像や同・寶樹院阿弥陀三尊像のように製作年代がわかるものもあります。栄区・證菩提寺や磯子区・真照寺の阿弥陀三尊像は鎌倉時代直前のすぐれた造像です。
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Ⅳ運慶仏の時代鎌倉時代1源頼朝が権力を確立した頃から運慶(?~1223)が鎌倉武士のための造像をはじめ、東国の造像は一変します。頼朝周辺の武士は運慶たちに仏像を発注しました。横浜市内にも磯子区・東漸寺薬師如来像、金沢区・東光禅寺薬師如来像などそのような状況を知らせる仏像が残っています。一方で金沢区・寶蔵院阿弥陀三尊像や青葉区・保木薬師堂薬師如来像のように、保守的な仏師が運慶らの刺激を受けて新しい課題に挑戦した仏像もあります。
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Ⅴ中世仏の諸相鎌倉時代2鎌倉時代以後の仏像史を特徴づける特殊なジャンルの仏像が横浜にも伝えられています。金沢区・龍華寺「善光寺式阿弥陀三尊像」は飛鳥時代に日本にもたらされた長野善光寺本尊像の模像、青葉区・真福寺「清凉寺式釈迦如来立像」は平安中期に中国北宋から請来された京都・清凉寺像の模像です。いずれも「三国伝来」の由緒を誇り、特別な形をしています。両者が合体したような不思議な像もあります。また聖徳太子像のような肖像彫刻の発展も注目すべきです。
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Ⅵ中世仏の展開鎌倉時代3・南北朝時代鎌倉中期以後には東国を本拠にした運慶派仏師が定着しますが、まもなく善派仏師が進出し、運慶派との混交もみられます。14世紀には京都の院派仏師も東国の仏像に参入しますが、それとは別に鎌倉に土着した院派の系統もありました。金沢区・慶珊寺の「遊戯坐像」や金沢区・三宝寺の「法衣垂下像」のような鎌倉地方特有の仏像は鎌倉土着の仏師によって造られたのでしょう。幕府滅亡後の南北朝時代にも鎌倉は造像の中心であり続け、横浜にも鎌倉特有の仏像がもたらされたのです。
展示概要
会期 | 2021年 1月 23日(土)~ 3月 21日(日) ※会期中一部展示替えあり |
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開館時間 | 9時~ 16時 30分(券売は16時まで) |
会場 | 横浜市歴史博物館 企画展示室 |
主催 | (公財)横浜市ふるさと歴史財団、横浜市教育委員会 |
特別協力 | 神奈川県立金沢文庫、神奈川県立歴史博物館 |
後援 |
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助成 | 公益財団法人 花王芸術・科学財団、独立行政法人 日本芸術文化振興会 |
協賛 |
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協力 | 横浜メディアビジネス総合研究所 |
展覧会監修 | 山本 勉(横浜市文化財保護審議会委員・清泉女子大学名誉教授) |
展覧会協力 | 萩原 哉(横浜市文化財総合調査団主任調査員・武蔵野美術大学非常勤講師) |
観覧料 | 一般 1,000円、大学・高校生 700円、小・中・横浜市内在住65歳以上 500円 |
※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、会期・開催時間・関連イベント等については変更する場合があります。
リピーター割引
本展の観覧記念券(招待券の場合は半券)を受付でご提示いただくと、通常料金の2割引きでご観覧いただけます。他の割引との併用はできません。
日時指定オンラインチケットのご案内
購入・詳細はこちらのページをご覧ください。事前の購入をおすすめします。
![横浜市指定 如来坐像(伝阿弥陀如来像) 飛鳥時代後期 松陰寺(鶴見区)[東京国立博物館寄託]](images/butsuzou_04.jpg)


関連イベント
1講演会
(1)「横浜仏像史-古代・中世前期を中心に-」
講師 | 山本 勉氏(横浜市文化財保護審議会委員/清泉女子大学 名誉教授) |
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日時 | 2月20日(土)14:00~(13:30開場) |
締切 | 2月3日(水) |
(2)「横浜の平安仏」
講師 | 萩原 哉氏(横浜市文化財総合調査団主任調査員/武蔵野美術大学 非常勤講師) |
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日時 | 2月 27日(土)14:00~(13:30開場) |
締切 | 2月10日(水) |
(3)「新仏教と武家政権」
講師 | 五味 文彦(横浜市ふるさと歴史財団理事長/東京大学名誉教授) |
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日時 | 3月 6日(土)14:00~(13:30開場) |
締切 | 2月17日(水) |
※各回共通
時間 | 14:00~15:30(13:30開場) |
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会場 | 横浜市歴史博物館 講堂 |
参加費 | 各回500円 |
定員 | 63名 / 応募者多数の場合は抽選 |
1~3のお申し込みは、各イベントページをご覧ください。
3特別講演会「手を合わすこころ~仏教文化と横浜の仏像」
講師 | 臨済宗円覚寺派管長 横田 南嶺 老師 |
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日時 | 2月 6日(土)13:00~15:00 |
会場 | 横浜市開港記念会館 |
定員 | 240人 |
参加費 | 1,000円 |
締切 | 1月20日(水) |
1~3のお申し込みは、各イベントページをご覧ください。
4ギャラリートーク
日時 | 1月30日(土)、2月13日(土)、3月12日(金) 各回 14:00~(40分程度) |
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会場 | 企画展示室 |
参加費 | 無料(特別展入館券購入者のみ) |
定員 | 20名程度 ※申込不要 |
5連動企画
インド楽器演奏とインド舞踊
「掌(てのひら)の上-インドの神像が導く歴史博物館の夕べ-」
日時 | 2月14日(日)18:00(開場:17:30) |
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会場 | 常設展示室 |
参加費 | お席付き観覧チケット 4.500円 お立見観覧チケット 3.500円 アーカイブ配信チケット 2.500円 他 |
定員 | 50人程度 |
6連動企画
宮地里実ソプラノリサイタル
特別展 横浜の仏像 ーしられざるみほとけたちー
関連コンサート「蜘蛛の糸」
日時 | 3月7日(日) 14:00~16:00(開場13:30) |
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会場 | エントランスホール |
運営協力金 | 4,000円(映像配信 2,000円) |
定員 | 30人 |
「横浜の仏像」展 アンバサダー

はな
モデル。神奈川県横浜市出身。
ファッション誌で活躍するかたわら、FMヨコハマ「Lovely Day♡ ~hana金~」(毎週金曜)のDJを務める。趣味はお菓子作りや茶道、仏像鑑賞など。
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