Q&A

Q : 発見した骨は事件に関係ないのでしょうか?

 平成22年5月9日、金沢八景の野島公園内の丘(通称ジープ山)で、貝殻の化石を掘っていたところ、人骨らしき物を掘り出したため110番通報しました。骨は赤茶色に変色し、かなり古い物らしく、警察官の話では「縄文人とか?じゃないでしょうか、事件性は低いと思います」と言う事でした。
実際そんな事あるのでしょうか?
(磯子区 おとーさんさん 会社員)からのご質問

A たまたま見つけた私どものホームページにご質問くださいまして、ありがとうございます。
  発掘調査は大抵の場合、道路建設や公園整備などの公共事業、個人住宅、あるいはマンション建設などの事前調査として行なわれる場合が大半です。しかし、稀に工事に取りかかってから遺跡が見つかることもあります。横穴墓などの遺構の場合、中には葬られた人の人骨が残っているものもあります。こうした人骨が見つかると、発見者はそれがいつの時代のものであるのか分からず、事件性があるのではないかと思ってしまいがちです。だって普通に生活している上で、人骨なんて目にしないですものね。

 ですから、あわてて警察に通報(連絡)することになります。通報を受けた警察は臨場し、その骨が人骨かあるいは動物の骨か、また人骨と思われる場合、事件性があるかどうかの確認をします。このときに、交番に勤務しているの警察官も頭蓋骨などの特徴がある骨を除けば人骨であるかどうかも判断できないので、監察医に頼んで確認してもらうようになります。監察医が鑑定した結果、事件性がなくまた現代のものではないと判明した場合、各市町村の教育委員会へ埋蔵文化財の可能性がある旨の連絡がなされ、今度は教育委員会の職員が現地を確認する事となります。

 この連絡を受けた教育委員会職員が確認し、人骨が遺跡や遺構に関係するものと判断された場合、発掘調査を緊急に行なうこととなります。概ねこのような流れで文化財認定がされ、その措置については警察から教育委員会に引き継がれる事になります。

 今回の場合も、発見場所の管轄である金沢警察署が監察医に鑑定してもらった結果、死後100年以上経っている死因不明の白骨として、横浜市教育委員会へと引き継がれています。その際に教育委員会で調べたところ、出土地点の野島公園内の一部は埋蔵文化財包蔵地として周知されている場所でした。簡単に言うと遺跡だったわけです。

 この場所は平成21年11月に横浜市教育委員会の職員が2基のやぐらを確認し、翌22年の1月に金沢区No.68遺跡(市の番号はNo.65)として神奈川県埋蔵文化財包蔵地台帳に登録されています。ですから、周辺から古い人骨が出土する可能性があったのです。

 やぐらは鎌倉を中心に数多く造られた遺構で、中世の武士や僧侶の墓所または供養堂と考えられているものです。ですから、やぐらの中から人骨が出土しても何らおかしいことはありません。また、やぐらの中にあった人骨を後世の人が他所へ移動して埋め戻すことも多く、今回見つかった人骨はこうした人骨の一部であった可能性も考えられます。
 いずれにしても、きちんとした発掘調査を行なわなければ詳細は分かりません。

 また、人骨の年代についてですが、残念ながら今の段階ではっきりしたことはいえません。1体分の骨(あるいは特徴を持つ骨をできるだけ多く)を見て計測しないことにははっきりしたことが分からないからです。また化学的な分析を行なうことで年代を測定することも可能ですが、そういった分析には一定額の分析料がかかるため、よほど特殊なケースでなければ行なわないのが普通となっています。

 埋蔵文化財包蔵地を手続きなしに勝手に掘ることは違法なことです。また、十分な知識がないまま取り上げられてしまった遺物(土器など)は、資料価値が損なわれてしまうことがありますので掘り出す行為はおやめください。

 なお、平成23年3月現在、この人骨は私どもの埋蔵文化財センターで保管・管理しています。

六浦大道やぐら群1号やぐらの遺物出土状態

この石塔類の下に50体ほどの人骨が見つかりました

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