Q&A

Q : 拓本について教えてください

埋蔵文化財センターのホームページに拓本体験って書いてありましたが、拓本ってなんですか?(鶴見区 よしまささん からの質問)

A 拓本とは、木や石、または石碑(せきひ)や器物に刻まれた文字や文様を紙に写しとったものをいいます。その方法には乾拓(かんたく)法と湿拓(しったく)法とがあり、湿拓法にはさらに直接湿拓法と間接湿拓法の2種類の方法があります。
乾拓法とは、100円玉などの上に紙を乗せその上から鉛筆でこすると文様が浮き出てくるというあのやり方で行なう方法です。皆さんも一度はやったことがあるのではないでしょうか。この方法では、文字どおり乾いた紙を使います。これに対して湿拓法は紙を湿らせて使います。直接湿拓法では魚拓(ぎょたく)が有名です。この方法は、とりたいものに直接墨をつけて形を紙に写し取ります。このためできあがった拓本は、とりたいものとは左右が逆になってしまいます(これを鏡像といいます)。一方、間接湿拓法は、とりたいものの上に紙を置いて、湿した綿などでその形にぴったりと紙が貼り付くように押しつけていきます。きれいに紙が貼り付いたら、少し乾かしてからタンポという道具で墨を紙につけていきます。この方法だととりたいものを墨で汚さないから大切なものの拓本をとるときでも大丈夫です。また、乾拓法に較べてと細かなところまで写すことができます。発掘調査で出土した土器のかけらなどは、埋蔵文化財という貴重な資料ですから、そのものを汚すことなく写し取れる間接湿拓法はもっとも適した方法といえます。
拓本は、中国で唐の時代(618−907)以前にはすでに発明されていました。写したいものに紙をあてて何枚も複製を作ることができるので、現在のコピー機と同じ利用のされ方をしていたんですね。中国では、このように古くから拓本の技術や押印(おういん)の習慣があったため、その後いち早く印刷技術が発達して木版印刷(もくはんいんさつ)が発明されることになります。ちなみに現存している世界最古の印刷物は日本の法隆寺にある「百万塔陀羅尼経(ひゃくまんとうだらにきょう)」(770年完成)となります。
拓本が中国で流行したのには次のようないきさつがあります。それは金石文(きんせきぶん)を残すことが流行したためです。金石文とは、当時の文化の内容を後世に伝えるために石や金属に文字を刻んで残したり、墓碑(ぼひ)・墓誌(ぼし)といって、死んだ人の事柄を書いてお墓に添えた(一緒に埋めた)もののことを指します。石などに刻まれた文字はみなきれいな字で書かれているいるため、その文字を拓本で写し取って、書の研究や文字の練習に使うために利用されたからです。
日本でも江戸時代になると流行したようですが、残念ながら日本においては、拓本よりは字が彫り込まれている本体の方が珍重されたために、中国ほどの広がりはなかったようです。中国の拓本や江戸時代の拓本などは、今ではその一部は美術品として取り引きされているとも言われています。
埋蔵文化財センターでは、定期的には行なっていませんが、見学時に事前に申し込みがあれば土器の拓本を実際に体験をすることができます。詳しい拓本の取り方などに興味のある方は一度試してみてはいかがでしょうか。

 

写真ではあまりはっきりと見えない器面の調整あとも拓本ではハッキリ分かります。

写真ではあまりはっきりと見えない器面の調整あとも拓本ではハッキリ分かります。
(右側の拓本は土器の内側になります)

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