新しい話

縄文(文様)について

 縄文土器に付けられている文様は、土器が作られた時期にもよりますが、その多くは字面からも分かるように縄目の文様が施されています。こうした文様は、縄文原体と呼ばれる道具を転がすことで付けられた文様であることが分かっています。
 この縄文原体は繊維を撚って作られたものです。繊維を紙縒(こより)のように撚っていき、ある程度撚ったところで真ん中くらいのところを摘み、繊維の両端を近づけると自然と逆の方向に撚りがかかります。さらにこの撚りをキツくしていき、先ほどと同じようにすると逆の方向(最初と同じ方向)に自然と撚りがかかります。このときにできたもの(原体)を転がすと、縄目のような痕跡が斜めにつきます。これがいわゆる縄文と呼ばれる文様です。今紹介したものは、同じ方向に撚りをかけたものどうしの組み合わせになります。しかし、実際に土器につけられている縄文の場合には、それぞれ違う方向の撚りのものを組み合わせて撚ったり、撚る回数を違えたり、または原体の一端に結び目を作って転がせたりして、さまざまな縄目の文様を用いていることが分かっています。縄文の種類については、また別の機会に紹介したいと思います。
 さて、左側の写真はこの縄文原体の復原品と原体でつけられた斜行縄文を写したものです。斜行縄文とは写真の天地の方向に原体を転がすと斜めに縄の文様がつくことから名付けられた呼び名です。上側に写っている原体の形は何かに見えませんか? ロープや注連縄(しめなわ)のように見えませんか?
 注連縄とは神聖な場所とそうでない場所(下界)を区別し、不浄なものの侵入を禁じるために張るもので、結界を表しているものです。皆さんも神社の鳥居などに飾られているのを見たことがあるかと思います。また、お正月に玄関に飾る注連飾りも注連縄の一種です。注連縄の起源は古く、古事記に書かれている尻久米縄(しりくめなわ)に由来するといわれていますが、一説には蛇が交尾している形を象ったものであるともいわれています。
 縄文土器には蛇を象った装飾や形を模した文様も付けられることがあります。こうした文様がつけられる背景には、蛇の持つ強靭な生命力、脱皮から連想される再生力、人をも殺める毒や、男根を想像させるシルエットなど、蛇の持っている生態や形態などをある種の信仰(神格化)の対象としてていたのではないかとも考えられます。また、さらに想像力を働かせてみると、縄文原体によって縄目の文様をつけることは、蛇の交尾を見ていて思いついたのかも知れません。さらに、土器につけられている縄文は、あるいは蛇の鱗を表現している可能性も‥‥。想像は尽きません。
 この話題は以前からいつか紹介しようと思っていた話しでしたが、肝心の蛇の交尾写真がなかったためにできませんでした。しかし、今年(2008)の夏に栄地域史研究会の柳下 武さんという方と仕事でご一緒させていただいた際に、アオダイショウの交尾写真を偶然に写されたということをうかがって、これ幸いと写真をいただき、やっと実現することができました。
 右の2枚の写真は、2008年7月13日の早朝に、柳下さんのお住まいの付近で撮影されたもので、デジカメで16カット撮られたうちの一部です。蛇の交尾時間は4〜5時間もの長いあいだ巻き付いたままで行なわれると聞きます。この時の交尾の様子は、約4分間のほどという短い時間であったそうです。恐らくちん入者(いい男?)に驚いてやめてしまったのではないでしょうか?

 


上が縄文原体
下がその原体によってつけた縄文


 2匹のアオダイショウが尻尾から絡み始め‥‥


注連縄のようになる2匹

 

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