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キャリパー
 キャリパーとは、製図などに使用する物の厚みを測る道具で、カニのハサミやクワガタのアゴを想像させる、大きく内側に湾曲した爪のような形をしています。また、2つの爪を留めているビスの反対側の部分は弧を描いた形をしており、そこに目盛りが刻まれています。この2つの大きな爪状のもので大きさを測りたいものを挟むと、逆側の目盛りのところに厚みが示されるという仕組みになっています。
 ものの厚みを計測する場合、単純な形状のものや縁辺に近い部分でしたら、2本の直線的な針をもつディバイダをあてて測ることができます。しかし、複雑で立体的なものや、縁から遠く離れた場所では、針先をものにあてることができないので測ることができません。このような場合に使う道具がキャリパーなのです。このキャリパーを使えば、針がディバイダのように直線的ではないため、測るものの厚みや出っぱりに邪魔されずに奥の方まで針の先端が届いて厚みを測ることができます。また、このキャリパーは優れもので、ものの厚みが測れるだけではなく、爪の先端を交差させることで容器などの内径を測ることもできます。ですから土器の内側の径を測る時にも使うことができます。
 土器の形状を表現する時に、キャリパー形の土器ということがあります。キャリパー形の土器とは、土器を真横から見た時に土器の胴部がくびれて、ちょうどキャリパーのシルエットのように見えるためにつけられた名称です。縄文時代中期の勝坂式土器の底部の付近の張り出しや口縁部が大きく外側に開いてから中に向かうところなどはとてもそっくりです。
 こういったキャリパー形の土器は、関東地方を中心とした縄文時代前期後半から中期後半までに多く見られる特徴です。ただ、この形状も時期によって変化し、底部付近の張り出しは次第に明瞭ではなくなり、胴部の膨らみへと徐々に代わってしまい、キャリパーの趣とはかけ離れたものになってしまいます。
 写真の土器は、都筑区の大熊仲町遺跡から出土した縄文時代中期の深鉢形土器です。どうですか? キャリパーの形によく似ていませんか?
 


キャリパー


左隣の土器と見比べてください

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