発掘調査を行なうにあたっては、まず、標高や座標値が出ている基準杭を用いて、調査を行なうエリアを設定します。
 次に調査エリアをおおっている堆積土を、建設用重機を用いて遺構が確認できるところ(遺構確認面)まで除去します。遺構確認面は、遺跡の種類や時代、遺跡の現状によっても異なります。




写真…堆積土(表土)除去作業(重機で表土をはぐ)
 重機を使用した堆積土除去作業ののちに、人力によってスコップやジョレンという道具で地面を丁寧に削っていきます。すると、遺構がある場所には、さまざまな形や大きさで遺構の覆土(堆積土)を確認することができます。遺構の時代や種類は、遺構の形や大きや、土層の違いで判断します。いちがいには言えませんが、遺構確認を関東ローム層上で行なった場合、黄色い地面のところどころに黒い色の遺構の堆積土を確認することができます。


写真…丁寧に削ると遺構が分かる
 遺構の確認作業と並行して、先ほどの基準杭を用いて調査エリアに調査用グリッドを組んでいきます。このグリッドとは、調査区上に仮想の方眼をかけたもので、遺構の位置などを把握するために必要なものです。また、このグリッドを用いて、遺跡のなかでそれぞれの遺構がどのように分布しているのかが分かるように、遺構確認図を作成します。この確認図は、どんな順番で遺構を調査すればよいか判断するために非常に重要な図面です。このとき、遺跡の起伏状況を示す等高線図なども作成します。ここからは各遺構の調査に入ります。

写真…調査用の測量杭を設置する
 掘りはじめる前にはまず、土層の堆積状況を調べるためのあぜ(セクションベルト)を設定します。このセクションベルトを残し、それ以外の堆積土を移植ゴテ(小さなスコップ)で少しずつ平たんに掘り下げて行きます。





写真…遺構掘削の様子(セクションベルトを残す)
 このとき、まとまって出土した遺物や床面に接して出土したものなどは、出土状況の写真や図化をするため、そのままの状況を保って掘り下げて行きます。それ以外の遺物は取り上げ、その出土位置が明確に分かるようなラベル(出土位置を記載した荷札)を付けたのちにビニール袋に収納します。




床面に接した遺物などの取り上げ(写真は貝層の採取)
 床面や底面まで掘り下げたら、土層の堆積状況を示す土層図を作成します。セクションベルトの断面をよく観察すると、土の色調や性質、含有物の違いなどで分層することができます。この土層の状況を記録することは、遺構の新旧関係などを知る上で重要な作業のひとつです。




写真…土層図を作成する(写真は試掘溝の壁面の土層実測
 このあと、セクションベルトをはずして、床面を精査して柱穴などを確認します。このとき、建て直しが行なわれている住居址などでは、古い柱穴と埋没(廃絶)する直前まで使われていた柱穴のチェックなどを行ないます。そののち、遺物の出土状況が分かる写真を撮影し、遺物出土状況図を作成します。




写真…床面精査の様子(床面施設の検出)
 さきほど確認した柱穴や炉(いろり)など、床面にしつらえられた施設を掘ります。また、同じ場所で建て直しが行なわれている遺構の場合には、より新しいものから掘っていきます。






写真…柱穴掘削の様子(いろいろな道具を使用)
 これで遺構は完掘されましたので、完掘された遺構の写真撮影を行ないます。写真撮影にあたっては,遺構の姿がより分かるように、やぐら(撮影台)を組み立てて、その上から撮影を行ないます。
 最後に、掘り終えた遺構の実測作業を行ないます。実測する方法はさまざまですが、平板などを用いて実測します。遺構を記録する際には、平面図・断面図などを作成しますが、細かな遺物や込み入った遺構などは微細図を作成します。
 おおむねこれらの作業の繰り返しを行なって遺跡の調査は進んで行きます。
写真…実測作業の様子(平板などを使って実測)

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