〈埋蔵文化財(まいぞうぶんかざい)〉あまり聞き慣れない言葉です。埋蔵文化財とは、もともとは『文化財保護法』のなかで用いられたもので、
遺跡
(いせき)・
遺構
(いこう)・
遺物
(いぶつ)をあらわす概念(がいねん)として使用されていた用語です。簡単にいうと、−
土の中に埋まっている文化財
−と理解していただければよいでしょうか。『文化財保護法』とは,歴史的・文化的・自然的遺産である文化財の保護を目的として制定された法律で、その中には,遺跡の発掘に際しての手続きや、遺跡のある場所での開発に対する処置が定められています。
たとえば、遺跡が自分の所有地であっても,勝手に発掘をしてはなりませんし,遺跡への対応を全くしないで、土地の開発を行なうことも禁じられています。なお,出土した土器や石器などの遺物については、『遺失物法』の規定に基づき、落とし主の分からない遺失物として扱われ、誰の土地から出たものでも、まずは国が所有することになります。
また、横浜市では『文化財保護法』のほかに,『横浜市文化財保護条例』や『横浜市文化財保護措置要綱』によって、市域の文化財の保護を進めています。
※発掘調査の手続きや埋蔵文化財の取扱いなどの具体的な説明については、各市町村の担当部署にお問い合わせください。また、当埋蔵文化財センターでは、遺跡の性格や出土品などの問い合わせには応じられますが、お尋ねの場所が遺跡かどうかということにはお答えできませんので、ご了承願います。
年間に行なわれている発掘の大多数は、開発で失われてしまう遺跡の情報を記録・保存しておくためのものです。このような目的で行なわれる発掘を〈
緊急調査
〉と言います。これに対して、研究を目的として行なわれる発掘を〈
学術調査
〉と呼んでいます。緊急調査は開発で失われる遺跡の範囲全体を調査するのが前提ですが、学術調査は、研究や遺跡の活用のために行なわれるので、通常、目的に応じた必要最低限の調査をすることが多くなっております。
また、これとは別の区別に、試掘調査・確認調査・本発掘調査という種類もあります。
試掘調査や確認調査は、埋蔵文化財の有無の確認や、埋蔵文化財包蔵地の範囲・性格などを把握するために行なわれるものです。具体的には,試掘溝(トレンチ)を設定、掘削し,その試掘溝の状況から、遺跡であるかどうか、遺跡であるとすればその時代や性格、範囲、遺構の密度、重要度、各遺構面までの深さ、遺構面の数などを把握する調査です。また、確認調査については、本発掘調査を行なわなくてはならない遺跡であるかどうか。また、実施する際にどれくらいの範囲を調査しなければならないのか。さらには,本発掘調査に要する期間や経費などの見積りのために遺跡の内容・性格などを的確に把握する目的もあります。
本発掘調査は、確認調査で得られた情報に基づき,調査の対象となる遺跡のすべてを調査し、遺跡全体の性格や範囲をつかむ調査です。
どのような発掘であっても、一度発掘してしまった遺跡はもとの姿に戻すことはできません。大げさにいえば、発掘調査自体も遺跡を破壊する行為の一つでもあるわけです。ですから、埋蔵文化財センターでは、限られた期間の中で極力多くの情報を記録・保存することができるよう、作業の効率化、発掘精度の向上に努めております。
公益財団法人 横浜市ふるさと歴史財団 埋蔵文化財センター
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