ためになる?豆知識

でべそのような突起がついた土器の底部破片

 埋蔵文化財センターでは、ボランティアの方を募って出土品再整理を行なっています。その活動内容は、過去に調査が実施された遺跡のなかで、未だ整理報告がされていない出土品や、整理報告はされているものの、その後、きちんと管理されておらず、箱に収納されているものがよく分からないものがあります。こうした出土品などを改めて確認し、その数量や内容を確認していく作業です。また、場合によっては復原作業なども行なうこともあります。


 平成27年1月現在、昭和40年に神奈川区松見町で市立盲学校建設に伴って調査した大口坂遺跡(おおぐちざかいせき。大口台遺跡とも呼ぶ)の再整理を行なっています。

 

 大口坂遺跡は周辺を含め過去に幾度かの発掘調査が行なわれていますが、この時の調査では、縄文時代中期の勝坂期、加曽利E期の竪穴住居跡が6軒調査されています。このうち2軒の住居内には、ハマグリやアサリなどの二枚貝を主体とした住居内貝層を伴っていたことも分かっています。また、4号住居跡からは埋葬されたものではない2体の人骨も発見されており注目されています。

 

 これらの遺物は、整理報告作業がなされないまま発掘調査を担当した調査団関係者が保管・管理していたものですが、諸事情により平成25年に神奈川県立歴史博物館の方へ移管されることになりました。その後、横浜市内の遺跡であることから埋蔵文化財センターが保管する方が良いとのことで、唐センターに移管されることとなりました。移管された際には、これまでの保管状況が良くなかったのか、段ボールやなかば朽ちた木箱などに入れられ、半数の資料はラベル(出土地点などが記載された荷札)も失われているような状況でした。


 こうした出土遺物のうち、表題の土器は5号住居跡表土と書かれた袋の中からみつかりました。5号住居跡は炉体土器(炉の中に埋けられている土器)の文様の特徴から、縄文時代中期後半の加曽利E期の竪穴住居であることが分かります。問題の土器片は、直径11cn強の約1/2ほどの深鉢型土器の底部破片で、土器の内底ほぼ中心に、径2.0〜2.5cm、高さ1.0cmほどのでべそ状の高まりを有しています。よく観察すると、粘土塊を内底に貼付け、周囲をナデ押さえて高まりを整形している様子がうかがえます。高まり頂部付近は、土器が取り上げられてから(袋の中で)擦れて表面が一枚剥けてしまったようで、土器の断面にみられるのと同じような淡橙褐色の色調を呈しています。

 

 この高まりは何の目的で取り付けられたのでしょうか?

 弥生時代から古墳時代に使用される台付甕型土器の底部(接脚部)には、脚台を取り付ける際に脚台側にへそ状のものが取り付けられている(残されている)ことがあります。しかし、この土器は平底で、しかも器面の整形状況からみると内底部にあたるものと思われます。この時期には、土器の底部に良く似た台形土器(器台ともいう)もありますが、平坦面を受け面とするには形状がやや小さく、また整形も今ひとつであり、やはり深鉢型土器の底部破片と考えるのが良さそうです。

 

 では、なにか落としぶた状のものを土器の中に入れて浮かせる(内底に接させない)ための工夫でしょうか? ただ、もしこのような目的で付けられたのだとしたら、あまり土器の底からは離れず、十分に目的を達することができなさそうです。また、中心に1か所だけ取り付けられていることから、不安定にならざるをえません。その他の用途として考えられるのは、土器に溜めた水を沸かす際に対流を良くするために設けられたものでしょうか? だとすると、もう少し同じような土器の出土例がみられても良さそうなものです。今後類例がないか気長に追跡調査してみます。

 

 ただ単に袋の入れ替え作業をするのではなく、出土品に触れて「これは何時代の土器かな?」「何に使った石なのかしら?」などいろいろ考えながら作業をしていると、こうした特別な形をした土器を見つけることもできる遺物の再整理作業。あなたも参加して面白い遺物を発見してみませんか? お時間があるときだけの参加で構いません。パート作業ではありませんので、特に作業に締め切りなども設定していません。空いた時間、できる範囲での作業となっています。ボランティアに興味がある方は、普及啓発担当まで連絡ください。現在は遺物整理作業には4名の方がボランティアとして登録して作業を行なっています。

でべそのような突起のついた土器の底部破片

詰替え作業だけではなく石膏入れを行なうことも


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