Q&A

Q : 土器石膏復原に関する仕事について教えてください

 私は土器の文様に魅力を感じています。ある展示会で石膏で復元された土器を見たときに、石膏が白いままになっていました。その時に石膏を土器の破片のように色や形を忠実に再現して、割れた土器を蘇らせたいと思うようになりました。土器石膏復原をする仕事があれば教えていただけませんか。 野牧(金沢区 大学職員)さんからのご質問

 ご質問ありがとうございます。野牧さんのお住まいの場所や質問された時期から、その展示は横浜市立金沢図書館の「瀬戸神社旧境内地内遺跡の発掘調査成果」の展示であった可能性が考えられます。
 この展示は当埋蔵文化財センターが行なった展示ですが、展示遺物の一部(62年度調査出土遺物)は石膏に着彩していませんでした。この時期に行なわれた復原土器の多くは特別なものを除いてあまり着彩は行なっていなかった記憶があります。
 その理由のひとつとして遺物の整理期間と遺物量の関係がありました。当時は開発行為が多く、また、それに伴う学校や交通網の整備などに伴い、多くの発掘調査が行なわれていました。ちなみに昨年度の横浜市内の発掘調査件数は当時の約1/4ほどに激減しています。発掘調査を実施すれば当然整理報告作業も行なわなくてはならず、測図や写真撮影に耐えられる必要最低限の復原で、展示を前提にした復原までは手が回らないような状況でした。
 こうした出土遺物については、今後新たに展示計画などがないとそのままの状態で保管されることになります。また、展示の際に新たに着彩することもありますが、今回のように突発的にいただいた展示の場合、予算化されていないために、新たに整理作業員(パートタイマーなど)を雇用して土器の着彩することができないことをご理解ください。
 さて、土器の着彩についてですが、最近ではあまり土器の色に近づけない風潮があります。その理由としては、実際に展示した時に、破損(復原)品であっても完(形)品と勘違いしてしまう可能性があるからです。以前、あまりにも完璧に復原したために、本人以外は完形品と思い込んでしまった土器がついには官製葉書の図柄になったことは有名な話です。
 博物館で展示を見ている時に他の観覧者が「まるまるの形で出土するなんて、すごいね」って話を聞かされることが度々あります。少し似せた色でも博物館の暗い照明の下では、専門家の私たちでもどこまでが本物の土器か見分けがつかない時があるくらいですから、土器そのものをあまり見たことのない一般の人が気がつかないのはしょうがありません。そもそも展示に際しては本来は別に着彩しなくても構わないわけですから。ではなぜ着彩するのでしょうか? それは、石膏の白い部分が写真撮影の際にハレーションを起こして背景紙(主にグレーや白)にとけ込んでしまい、土器のフォルムが分からなくなってしまうからです。当センターではまだ石膏を使用していますが、最近では石膏に変わるカラーの材料(素材)もあるようです。
 最後に、土器の復原作業の仕事についてですが、当センターのような機関(施設)では、作業がある程度分業化しており、復原にかかる石膏作業などはパートタイマーを雇用して行なっています。こうした作業は事業ごと(遺跡ごと)の雇用が前提となっているため、短期間の雇用となっております。ご質問にあるような「(石膏部分を)土器の破片のように色や形を忠実に再現して、割れた土器を蘇らせ」るような作業は、美術品などの造形(復原あるいは複製)をする専門業者もありますので、そちらの方に務められるのが良いかと思われます。

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