Q&A

Q : 土器の裏に何かが書いてありましたが、あれは何ですか?

先日、子供を連れて埋蔵文化財センターの体験学習に参加しました。早めにセンターに着いたので、展示室を見せていただいたのですが、飾ってあった土器の裏(内側)に白い字のようなものが書いてありました。勾玉作りが終わってから尋ねようと思ったのですが、そのまま聞かずに帰ってきてしまいました、家に帰ってから子供と話しているうちに思い出し、それから気になってしょうがありません。あれは文字なのでしょうか? また、文字だとすると一体何が書かれているんですか?(栄区 Nさん 専業主婦)

A よく見ていましたね。あれは注記(ちゅうき)と言って、その遺物がどこの遺跡のどんな遺構(たとえば住居跡やお墓など)の、どの層から出土したものかを表している非常に大切な文字情報です。遺跡から出土したほぼすべての土器(片)や石器にはこの注記が施されています。
土器のかけらは大きいものから小さなものまでさまざまです。大きな破片でしたら、そのすべての項目をきちんと書き入れることができますが、小さなものではそういきません。また、漢字で書き入れるとなると、かなり大きな字となってしまい、小さな破片だと全体が字だらけになってしまって、土器の表面の様子が分りにくくなってしまいます。ですから私たちは、画数の多い漢字や長い遺跡や遺構の名前などは省略記号で書き入れたりしています。初めて見た人にはなんだか分らなくてもしょうがありません。
また、かなり小さい破片には、遺跡の名前や遺構の名前などを省略する場合もあります。同じ遺跡や遺構の箱にしまっておけば、その箱から出してしまわない限り他の破片には記載されているので分りますからね。また、こうした小さな破片は整理報告作業が終了した後は、あまり利用されることがない(箱から出すことがない)というのも理由のひとつです。
こうした注記作業は、ポスターカラーと面相筆(めんそうふで)などで行ないます。私ども埋蔵文化財センターの基準をあてはめると、同じ箱数の土器を扱った場合、土器を洗う作業量の2倍はかかってしまうものと考えています。この作業効率から考えても、かなり根気のいる作業であることが分ります。だって想像してみてください。ワープロ生活に慣れてしまった現代人が、筆を使って小さな土器片1点1点に文字を書き入れていくんですよ。1日中注記を書いていると、知らず知らずのうちに小さな破片ばかり残ってしまって嫌になってしまうこともあります。むかし、ビックリ人間コンテストなどのテレビの特集番組で、米粒にお経を書いてしまう人などがいましたが、疲れてくるとそんな人が手伝ってくれればなんで考えてしまいます。
注記の多くは、土器の内側などのなるべく目立たないような場所に小さく書き入れられています。土器の内側だと思って注記を書いたのに接合したら表側であったなんでいうこともたまにあります。さすがに博物館の常設展示にはないでしょうが、こうした土器を見つけたら、お友達にこの注記の話を紹介してください。
ちなみに、こうした注記作業については、パートタイム職員に作業をお願いしています。パートタイム職員は随時募集しているわけではありませんが、こうしたお仕事に興味のある方は連絡をいただければ、その時点での雇用情報をお伝えすることができると思います。

 

TOPへ戻る 一覧画面へ戻る 埋文ページホームへ