Q&A

Q : 古い地名の調べ方を教えてください。

遺跡の名称や所在地名に小字などの古い地名がしばしば記載されています。こうした地名は土地の歴史を知る上で貴重だと思い以前から興味があるのですが、現在の地図にはすでに記載されていないので調べる上でなかなか良い資料がありません。報告書などを作成する際にはどのようにして調べているのでしょうか。(横浜市 ANさん 教員)からのご質問

 A 私たちが遺跡名をつける際には、ご指摘にあったように字名(あざめい)をつける場合が多くなっています。その理由の1つとして上げられるのは、地域に住んでいる方々が古くから親しんで使用されていた呼称(こしょう)であるからということです。ただし、すべての場合に付けられるわけではなく、場合によっては事業者(発掘調査の原因者)の意向で事業名称を遺跡名にする場合もあります。

 青葉区にある県指定史跡の市ヶ尾横穴墓群の近くで、宅地造成に伴って発掘調査を実施した市ヶ尾第二地区18街区(大場第二地区21街区)横穴墓群などがこのケースにあたります。

 当然のことながら、私たちは地名や地籍(ちせき)の専門家ではないので、横浜市域の字名を熟知(じゅくち)しているわけではありません。ですから、その都度事業地(発掘調査地点)にあたる場所の字名を調べることになりますが、先ず最初に事業担当者を通じて該当地の字名を確認します。事業実施にあたり事業用地を取得する際に、字名や旧地番などが記載されている図面が担当者の目に触れているようで、意外とあっさり分るケースもあります。また、その土地を所有している方に伺っても分らないケースもあります。

 さらに、ひょんなことから、発掘調査中に見学者や周辺の方に聞いて判明する場合もあります。ただし、遺跡の名称は発掘調査着手以前に決定しなければならず、こちらで認識していた字名と実際には場所が異なっていたなどというケースもまれにあります。

 私たち自身で調べる際に最も良く使用するのが『新編武蔵風土記稿(しんぺんむさしふどきこう)』や『新編相模風土記稿(しんぺんさがみふどきこう)』です。これらの書物は、江戸時代に編纂(へんさん)された書物で、当時の村の内容や村どうしの位置関係、どういった寺社や河川や道路、特産物があるかなどが細かく記載されています。ですから、現在も残っている寺社などが近くにあればその字名を知ることができます。また、『和名類聚鈔(わみょうるいじゅしょう)』にも古い地名が記載されているので参考にすることがあります。ただしいずれの場合にも、現在の何丁目何番地が何という字に相当するというところまでは分りません。

 市民の方で字名を調べる場合、もっとも手っ取り早い方法は、横浜市市民局総務部住居表示課で発行している『横浜の町名』平成8年度刊をご覧になるのが良いかもしれません。この本には、現在の住居表示にいたった経緯や、以前の地名などが掲載されています。ただし、小字などの細部にまでは触れていないようです。『新編風土記稿』や『横浜の町名』は横浜市内の図書館で閲覧することができます。市域の各図書館の蔵書についてはネットで検索することができます。また、私どもの財団が管理運営している横浜市歴史博物館で所蔵している蔵書についてもネット検索が可能です。ぜひリンクボタンをクリックして確認してみてください。

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