Q&A

Q : 発掘で祟りってあるのですか?

家の近所で古墳の発掘調査をしていたようですが、お墓を発掘して発掘した人や周囲に暮らしている人に祟(たた)りや呪いにかかったりしないのですか? (匿名さんからのご質問)

A こうした質問は、発掘調査を行なっていると必ず尋ねられるといってもよい質問のうちの一つです。結論から言いますと、発掘調査を行なうことで呪いにかかったり祟られたりすることはありませんのでご心配なく。

 発掘調査と呪いについては世界的に有名な話しがあります。エジプトのツタンカーメン王墓の発掘調査を行なったイギリスの考古学者のハワード・カーター博士(1874-1939)と、彼の援助者であるカーナボン卿をとりまく発掘関係者の間で次々と起こった怪死についての話しです。王墓の発掘調査に携わった関係者が、相次いで突然死などで亡くなりました。一部の人たちは、その原因がカーター博士がツタンカーメン王墓を暴いたためではないかと考えました。なぜなら、ツタンカーメン王墓入り口に「王の眠りを妨げる者には、死の翼が触れるべし」という言葉が彫られていたからです。このことから、眠りを妨げられた王の呪いが発掘関係者にかけられたのではないかとまことしやかに広まりました。ただし、これらの原因については、科学的には発掘調査との因果関係はないものとされています。


 日常的に発掘調査を行なったり、副葬品や人骨に触れる機会の多い私たちは、あまり呪いや祟りのようなことは気にしませんが、一般の方々は、お墓を掘り返すなんて不謹慎であって、そのことによる報復や罰があると考えてしまいがちです。実際に、横穴墓を調査している時に、先祖のお墓かも知れないので、お盆の時期だけは調査をやめてくださいと頼まれたこともあります。しかし、古墳や横穴墓の発掘は、興味本位やお宝を探すためにお墓を暴くのではなく、たまたま開発地にある古墳などが失われてしまう前に、記録しておくために行なうのです。きっと葬られている人も、縦横無尽に破壊されてしまうよりは歴史の解明のために調査してもらえるなら気が休まるでしょう。もちろん住居跡などの遺構の場合もそうです。


 また、日本国内の発掘調査に関しても、残念ながら不慮の事故で亡くなってしまう場合があり、こうした場合にもまことしやかに古墳の被葬者の呪いだとか、合戦場や刑場のあとを掘り返したためなどとささやかれたこともあります。しかし、こちらも科学的な根拠はまったくなく、単なる不幸な事故であったものに尾ひれがついて都市伝説化したものでした。


 遺跡調査に関わるたたりについては横浜市内にもあります。日本各地に起こった呪いの現象を集めた本の中に、金沢区の上行寺東遺跡が出ていてビックリしました。上行寺東(じょうぎょうぎひがし)遺跡は中世のやぐらがまとまって検出された遺跡で、やぐらの中からは人骨やたくさんの五輪塔が見つかりました。その本の中では遺跡の名前や場所、人物名は匿名とされていましたが、発掘年度や場所、遺跡の保存に絡んだ調整の話しなどの記述から、この遺跡のことを記載していたことが分かります。


 上行寺東遺跡は、マンション開発に伴って発掘調査が行なわれた遺跡です、その本の中には、調査に際してマンション開発(本の中では市営住宅)を推進していた市議会議員やその調整にあたっていた市職員が、遺跡を発掘したことによるたたりで相次いで亡くなったというように記載されています。この遺跡の発掘調査は埋蔵文化財センターで行なったわけではなく、民間の発掘調査機関が行なったものでしたが、その遺跡の発掘にあたった担当者や調整にあたっていた市職員は、もちろん現在も元気で働いています。


 また、考古学を学んでいる人たちの中にはこんな都市伝説?とも思える話しもあります。人骨に触った考古学専攻生(特に女性)の婚期が遅れるというものです。こちらも科学的な根拠はまったくなく、婚期が遅れてしまった言い訳に利用?(笑)されているようです。象牙の塔に学ぶ人は、早く社会に出て働いている人より出会いが少ないためなんでしょうね。最近はどうか分りませんが‥‥

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