Q&A

Q : 見つけた土器の値段はいくらですか?

家の近くで縄文土器のかけらを見つけました。全部見つけて完成させたら、いくらぐらいになりますか?授業で報告したいので、ヨロシクお願いします。(横浜市 宮坂ともやさん 小学6年生)からのご質問

A 縄文土器を見つけましたかそれは良かったですね、大切にしてください。近年、お宝鑑定のテレビ番組なども多く、スポーツ選手や芸能人の持ち物や、こうした出土品の値段に関する疑問をもっている方も多くいるようです。インターネットで「縄文土器 値段」などの文字をいれて検索するとオークションサイトなどにいくつかの出土品が掲載(けいさい)され、一定程度の価格が表示されているのが分ります。サイトに掲載されている土器のほとんどは、美術品として取引されているものが多いようです。
人は悲しいことに、人が持っていないものを持っていることに喜びを感じ、人が持っているものを持っていないと不安がる生き物ののようです(間違っていたらごめんなさい)。人が持っていないもの(欲しいもの)を手に入れようとする人がいれば、必ずそれを売る人がでてきて、そのものに価格が生じ商売が成り立ちます。また、それが希少価値(数が少ない)であればあるほど、高い値段がつけられます。しかし、そのものが持っている価値というものに値段がつけられないものもあります。土の中に眠っている埋蔵文化財もその一つです。文化財とは国民の財産ですから、本来は勝手に商売の道具にされてはならないものです。ですから、ともやさんがその土器を見て貴重だ、素晴らしい、と感じたのであれば値段ではなく、その素直な気持ちを大切にしたらよいかと思います。答えになっていなくてすみません。

さて、ともやさんは授業で土器のことを報告するという考えがあるようですが、わたくし達がよく用いる方法を用いて報告してみてはいかがでしょうか。

1 地図を作ろう
拾った場所を入れた(場所が分かる)地図を作ります。市販されている地図に拾った地点を落とすことが一番ですが、なければ、周囲の建物や道路との関係などがわかるような地図を作って拾った場所を示しましょう。また、横浜市内の図書館には横浜市教育委員会発行の『文化財地図』というものがおいてあるはずです。こちらには遺跡や埋蔵文化財包蔵地(まいぞうぶんかざいほうぞうち=土器などの遺物が出土する土地)が掲載されいるため、拾った場所が遺跡であるかどうかを確認することができるので、ぜひご覧になってみるといいです。この地図のコピーをとってそれに拾った場所を示すのも良いでしょう。
2 写真を貼ろう
地図の他に、拾った場所の写真もあった方が良いでしょう。人に説明する時に、どんな場所で拾ったのかが一目で分かりますから。もちろん拾った土器の写真もあれば完璧です。
3 採集位置と採集状況の記録
地図や写真だけではなく、誰が(この場合ともやさん)、どこで、いつ拾ったのか、またどんな状態で地表に表れていたかなどの情報も書いておきましょう。こうしておけば、ずっと記憶しておかなくても、この文を読み返せばその時の情景がすぐに思い起こされるでしょう。
4 情報のカード化
1〜3のことをひとまとめにし、カード形式にしておけば、次に同じような体験をした場合、以前のものとすぐに比較することができるからたいへん便利です。また、このカードをもとにして模造紙などで発表用の大きなパネルを作ればよいでしょう。

それから、もっと破片を見つけて、お持ちの土器片を完成した形に復原しようとして、見つけた土器の回りを掘り返すことは絶対にやめてください。掘って取り出すことは、発掘調査と同じことになります。発掘調査にはさまざまな手続きが必要となりますし、その土地の所有者(持ち主)の許可なく土地をいじることははっきり言って犯罪です。でも掘り返すのではなく、地表に表れている土器や石器でであれば、土地の持ち主に「拾ってもいいですか?」と一声かければ許されることもあるでしょう。その際にも、その土地が畑であれば、農作物などに十分注意して拾いましょう。この時にこの土地の伝承や他にも土器がでなかったかなどの話しを聞いておくと先ほどのカードに書き込む情報が増えて立派なものになるでしょう。
また、いったん拾ってきた土器を捨てることも絶対にやめてください。土器などの遺物は、どこからどのようにでてくるのかが非常に大事です。その土器を自分が大切に保管する気持ちがない場合には拾わない方がよいでしょう。また、どうしても保管できなくなったら場合には私どものような施設に、先ほど教えた拾った地点が分る情報とともにお持ちくだされば、大切に保管いたします。
さらに詳しいことが知りたければ、ご面倒でも埋蔵文化財センターにご連絡ください。連絡先は左のフレームのお問い合わせボタンを押せば、下の方に掲載しています。
最後に、この質問に答えている私は、中学1年生の時にはじめて土器を拾いに行って「将来こうした職業につければいいな」という漠然(ばくぜん)とした夢ができ、今では埋蔵文化財センターという職場で働いています。ともやさんも、これをきっかけに考古学の道に進むかもしれませんね。

 

君ならいくらの値打ちがあると思う?
[大熊仲町遺跡出土の勝坂式土器(縄文時代中期)]

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