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縄文海進について
 私たちが住んでいる地球は、寒い時期(氷河期)と暖かい時期(間氷期)をくり返して現在にいたっています。最も新しい氷河期は今から約10,000年前に終わり、現在は間氷期にあたるといわれています。
 間氷期のあいだであっても、緩やかな気候の変動があります。縄文時代前期(約6,000年前)頃は地球の気候が最も暖かかった時期で、現在のより平均で約2度ほど高い気温でした。そのため、南極や氷河期に形成されていた氷河が溶け出して、海面の高さも現在よりも4〜6mほど高くなっていました。横浜市域では、海に面した鶴見区、神奈川区、西区、中区、磯子区、金沢区はもとより、内陸部の港北区、都筑区、緑区や戸塚区までも海岸線が入り込んでいました(図参照)。
 この海進については、遺跡の発掘調査からもうかがい知ることができます。貝塚とは、当時の人たちが食べ終わった貝や魚やいらなくなった道具などを、集落近くの斜面や廃絶した住居跡の中(埋まりかけの窪み)に捨てた跡のことをいいます。このため、この貝塚を調査することで、当時の人たちが何を食べていたのかなどが分かります。また、貝は種類によって、海に棲むもの、川に棲むもの、その両方の条件が整った場所に棲むもの、また、砂や泥を好んで棲むもの、岩場に棲むものがいるため、貝が採れた周辺の環境なども分かります。もちろん、貝に混じって出土する土器から貝塚のつくられた時期も分かりますし、当時の人たちの食べ物の好みも分かります。
 現在地球は大きな流れでは、暖かい時期から寒い時期に向かっています。しかしながら、人類が自然環境を徐々に壊わしてしまったために、自然のバランスがくずれて温暖化が進んでいる状況です。ここ100年の海面推移を見ても、10〜20cm上昇しており、このまま地球温暖化が進むと、21世紀の終わりには最大で90cmほど上昇すると予測されています。その結果、縄文海進のラインほどではありませんが、私たちの暮らしている横浜の一部が海中に没してしまうことも考えられます。これ以上の温暖化をすすめないためにも、これからは一人ひとりが地球環境のことを十分に考えて生活していかなければならないでしょう。
 掲載した図は、松島 義章氏の海進最高期の推定海岸線を参考に作りました。また、参考にした資料が神奈川県を対象としていたため、東京部分の推定線は入っていません。
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