新しい質問
土器の器種について
 土器にはさまざまな形のものがあります。一体どんなものがあるのでしょうか?
 ちょっと羅列(られつ=連ねてならべること)してみましょう。甕(かめ)・壺(つぼ)・鉢(はち)・高坏(たかつき)・椀*(わん)・器台(きだい)・坏(つき)・皿‥‥
 さらに、微妙な形の違いや用途によって細かい呼び方(分け方)もあります.また、同じものでも研究者によって異なった名称を用いる場合や時代によって呼び方が異なる場合もあります。では代表的な器形を、原始・古代のものに絞ってちょっと説明してみましょう。

●甕形土器
 口縁部と頸部・胴部との差が少ない形をした土器で、真横から見たときに横方向の最も大きな場所(最大径といいます)が、高さの半分より上側にあるものをいいます。なぜ、上側にあるかというと、土器の表面積の大半を器の下側に持ってくるためです。このため、火にかけたときには、火のまわりがよくなり、早く熱が伝わります。ですから、この甕型土器は主に煮炊きに利用したものと考えられています。また弥生時代の後半から、より熱を効率よく伝えるために甕の底の部分に台を付けた台付きの甕形土器も現われます。

●壺形土器
 甕形土器に対して、口縁部と頸部・胴部との差が大きい形をした土器をいいます。最大径は、高さの半分から下側にくるものがほとんどです。また、胴部は球形に近い形状をしています。土器の表面(内側と外側)は甕形土器に較べるときれいで丁寧(ていねい)に磨かれていたり、赤色顔料や朱などが塗られているものが多いです。このため、液体や大切なもの(種もみなど)を入れておく貯蔵に利用したものと考えられています。壺型土器は甕形土器に較べてその形のバリエーション(変化)に富んでいます。

●鉢形土器
 おおむね最大径が口縁部にあるもので、背が高く口縁部から底部にかけて直線的で筒形に近い形のものや、背が低く最大径が器高(きこう=うつわの高さ)より大きなものなどがあります。これらの形は、縄文土器に限って深鉢形土器、浅鉢形土器と呼びます。深鉢形土器は主に煮炊きに利用した土器ですが、貯蔵などの用途も兼ねていました。その後、弥生時代にはいって甕形土器と壺形土器がその用途によって区別されたため、深鉢形土器という名称はそれ以降の時代の土器には使いません。また、浅鉢形土器はおもに固形物を盛っておくための容器で、深鉢形土器に対して付けられた名称ですから、弥生時代以降の同じ形のものは単に鉢形土器という名称で呼んでいおり、その用途はどちらかといえばものを盛るために用いられていました。

●椀形土器*
 鉢形土器の小型なもので、胴部にあたる部分が丸みを帯びているものをいいます。サラダボウルやお味噌汁などを飲むお椀を想像していただければ良いかと思います。中には鉢形土器と区別がつきにくいものがあり、報告書や展示会を開くときには悩んでしまうこともあります。鉢形土器に較べるとサイズが小さいことから、こちらも貯蔵容器としてではなく、食事の際に汁物を入れたり、ものを盛るために用いられたものと考えられます。

●坏形土器
 鉢形土器や椀形土器の器高の低いものをいいます。椀形土器と同様の用途で用いられたものと考えられます。現代ではこの坏というと杯(さかずき)が思い起こされます。お神酒を飲むときのような杯を想像すると良いかも知れません(高台と呼ばれる脚の部分が付くのはロクロを使いだしてからのことです)。

●高坏形土器
 坏形土器に高い台が付いた形状を呈する土器で、食べ物や土器などを盛るために使われていたものと考えられます。壺形土器と同様に表面が磨かれ、赤い色が塗られている場合が多く、大切なものを盛っていたとも考えられます。映画の1シーンで王様の脇に銀製の容器でフルーツを盛って置いてありますよね。あれです、あれ。

 今回紹介できなかった器形については、またの機会に紹介させていただきます。最後に、下の図ですが、考古学を勉強する学生は必ずと言ってよいほど目にしたことのある図です。これは人類学者の長谷部言人(はせべことんど)博士が提唱(ていしょう)した器形の分類方法を図化したものです。長谷部博士は明石原人の命名者として知られています。博士は、土器の最大径を1辺とした正方形をつくり、その正方形を9分割して土器の器形を区別しました。皆さんもどこかで見たことがあるのではないのでしょうか?

*椀形土器 いわゆるお椀の形をした器(うつわ)にはその素材によって、漢字のつくりが異なります。木偏(へん)の椀は木で作られたお椀、石偏の碗は磁器(じき=石の粉を使って作った器)の碗と表記します。ですから通常は土を焼いて作った土器は土偏に宛という字を用いて表します。しかし、この土偏に宛という字は通常ワープロなどには入っていない字のため、このホームページの中では椀または碗の字をあてることにします。ご了承(りょうしょう)ください。

長谷部言人(はせべことんど)博士の器形分類法

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