新しい質問

Q 発見された遺物は誰のもの?
 
発掘調査でみつかった土器や石器は誰のものになるのですか? 発掘調査をした人のものになるでしょうか、非常に興味があります。(緑区 管野さん からの質問)

 

 遺跡を発掘していると土器や石器などいろいろなものが出てきます。では、遺跡から出てきたものはいったい誰のものになるのでしょうか? 誰もがとても興味を覚える所だと思います。
 埋蔵文化財(出土品)が発見された場合は、拾得物(落とし物)として取り扱われます。なぜなら出土品は誰のものであるか分からないからです。落とし物を勝手に持ち帰って所有することは占有離脱物横領罪(または遺失物等横領罪)という罪になります。占有離脱物横領(せんゆうりだつぶつおうりょうざい)とは、占有(所持)者の意思に基づかずにその占有を離れ、誰の占有にも属してない物を不法に領得(りょうとく)することで、つまりは誰のものか分からないものを勝手に自分のものにしてしまうことをいいます。ですから、ゴミ集積場に捨ててある(置いてある)ゴミ類(あるいは不要品)のなかに、まだ使用できそうなものがあったからといって持ち帰っては犯罪を犯すことになります。気をつけましょうね。
 話しが逸(そ)れてしまったので元に戻しましょう。このように遺跡から見つかった出土品も誰のものか分からないので、遺失物法に基づいて警察署に落とし物として届け出ます。ただ、届け出る際には、その量が膨大なときもあるし、汚れたままのなんだか良くわからないものを警察で預かっておくことができません。そこで、『埋蔵物発見届』という書類を提出することで、拾ったものを届け出たという便宜上の取り扱いをすることができる仕組みになっています。
 そして、お金を拾ったときと同じように、警察署による14日間の公告の後、3か月間持ち主(所有者)が現われるのを待ちます。3か月間経った時点で持ち主が現われなかった場合(当然現われないでしょうね)、国の機関以外が発見した場合、都道府県の帰属になります。 また、警察署へ届け出を行なった遺物は、学術上の整理や分類をする必要があるために、博物館やこうした遺物を取り扱う適切な施設(埋蔵文化財センターなどの)に一時保管することが認められています。この際には『出土文化財保管証』を保管者(施設の長)が県教育委員会あてに提出しなければなりません。また、『埋蔵物発見届』を警察署に届ける際に、この写しを併せて提出することとなっています。こうして(便宜上)届けられた遺物については、警察署が教育委員会に対して埋蔵文化財であるかどうかを尋ね、教育委員会は文化財としての価値があるかどうかを判断し、認定を行ないます。
 これまでの説明は所有者が現われない場合でしたが、所有者がいた(判明した)場合はどうなるのでしょう。例えば、先祖代々守ってきた土地を掘ったところ、小判がたくさん出てきたとしましょう。その一族に伝わる文書の中には、その場所に小判を埋めたことが記載されていました。また、その文書も偽造された物ではないようです。このような場合、その所有権は土地の所有者となります。また、その土地の所有者以外が発見した場合には、発見者にも所有権が発生することになります。ただ、どちらのケースであっても、実際には出土した小判には金銭的な価値だけではなく、文化財としての価値を有しているものもあるため、文化財に認定された場合、必ずしも土地の所有者や発見者のものになるとは限りません。こうした場合には、教育委員会や文化庁などと調整を行なう必要性が生じます。
 数年に1度の割合で徳川埋蔵金発掘の特番がテレビで放映されています。大型建設重機を何台も投入して大々的に発掘調査(?)をしているようですが、もし埋蔵金が見つかったとしても、それは時の政府(幕府)のお金ですし、当然徳川家の子孫もいるわけですし、土地所有者や発見者のものになるのかは微妙なところです。
 私たちも長い間発掘調査を行なっており、埋蔵金伝説がある場所の調査も行なったことがありますが、大判や小判が出てきたことは一度もありません。けれども、昔の人達の生活に直接触れることができる貴重な体験ができるわけですから、別に残念とは思いません。小さな土器のかけらも大切な文化財のひとつなのです。
 『埋蔵物発見届』や『出土文化財保管証』どのような書式である興味がある方は、神奈川県教育委員会が発行している『埋蔵文化財保護の手引き』という冊子をご覧になると掲載されていますのでご覧になってください。

 

 

 

 

 

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