新しい質問

Q 土坑ってなんですか?
 
大昔には土坑というものがあったと友人から聞かされましたが、友人の説明では今一歩よく分かりませんでした。できましたら、土坑のことを教えてください。(神奈川県 kiraraさん 女性からのご質問
 

 

A 発掘調査をしていると、住居の跡やお墓の跡などさまざまな遺構(いこう)が見つかります。こうした遺構の中に土坑(どこう)と呼ばれる種類の遺構があります。土坑とはある程度の大きさと深さを持った掘り込みのことをいいます。
 以前は「土坑」のことを「土壙」と書くこともありました。「土壙」の「壙」の字にはただ単に穴という意味だけではなくお墓という意味をもっています。しかし、掘り出された「土坑」の全部がお墓とは限らなないため、この字を使用するのは間違っていると考え「坑」の字をあてるようになりました。この「坑」の字は、穴や土をまっすぐに掘った大きな穴を意味する語句なので、お墓以外の性格を持つ掘り込みに対して使用しても問題がないからです。ただし、その性格がお墓であると断定できる土坑に対しては、「土壙」と表記している場合があります。ちなみに土壙墓という言い方をする人もいますが、「土壙」という単語ですでにお墓の意味があるため、使い方としては正しいとはいえません。土坑墓ならいいんですけどね。
 では、土坑にはどのような性格があるのでしょうか。土坑には、陥し穴やお墓、物を貯蔵するための施設などさまざまな性格のものがあります。その性格は、土坑の形状や出土遺物、堆積土の状況などから判断します。たとえば、お墓の性格を持つような土坑の場合、副葬品や埋葬に伴うと考えられるような遺物が出土しますし、堆積土の状況は、人為的に埋め戻されているような状況を示しています。また、貯蔵穴の場合もそうですが、集落内や集落の近くにある程度まとまって検出されます。貯蔵穴の場合には、断面の形が袋状であったり、平面形状が円形や方形を呈しているものが多く、比較的掘り込みが浅めのものが多くなっています。これに対し、陥し穴の性格をもつ土坑は、概して大型で掘り込みも深めとなっています。また、坑底(こうてい=土坑の底面)に施設を持つものもあります。この施設は逆茂木穴(さかもぎあな)とも呼ばれます。
 逆茂木とは、枝のついた木の棒などを埋めた状態のことをいい、中世の城郭等で外敵の侵入を妨げる施設として使われているものです。これと同じようなものを土坑の坑底に設えることで、穴に落ちた動物の足を絡めとり、その跳躍力をなくして穴から脱出できなくなるようにした施設と考えられています。また、前段で紹介した2つの性格をもつ土坑に較べると散在(さんざい)し、多くの数が検出されます。
緑区霧が丘に「霧が丘遺跡」という遺跡があります。この遺跡は昭和45年に調査された遺跡で、数多くの土坑が検出されました。この時の研究成果は、縄文時代早期における狩猟方法や土坑の性格づけの嚆矢(こうし=先駆け)となっています。写真は旭区の矢指町で調査された矢指谷遺跡で見つかった土坑です。馬の背状を呈している台地の上にたくさんの土坑が展開しているのが分かります。ただし、これらの土坑は一時期に作られたものではなく、ある程度の時間差をもって数基ずつが使用され、長い時間をかけた結果、このようになったものと考えられます。


左 矢指谷遺跡で見つかった土坑群 右 同遺跡検出の逆茂木穴のある土坑

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