Q 出土した土器について教えてください。
 畑を耕していたら厚手の土器片が出てきました。表裏ともに縄目の文様ではなく、木の枝で付けられたような縦横斜めの線で模様が描かれていました。
 焼きあがりは堅く、土器の内部には砂粒程度のきらきら輝くガラス質のものが見えます。 これは縄文土器なのでしょうか。 (戸塚区 小川さん からのご質問)
A ご質問には写真が添えられていないので何ともいえませんが、文面から察すると縄文時代の早期(今から約9,000年前)の土器の可能性が高いですね。この頃の土器には、撚糸文(よりいともん)と呼ばれる文様や条痕文(じょうこんもん)と呼ばれる文様が付けられています。縄文時代の早期も終わりの頃になると、土器の内外面に条痕文が施されている土器が多く出土します。縄文土器では、内面に文様が付けられるものはあまり多くはありません。また、弥生時代以降の土器では、甕形土器の内外にハケ目と呼ばれる器面調整痕(きめんちょうせいこん)が付けられるものがあります。ただ、ご質問の中に厚手という表現があることから縄文時代早期末の土器片であると考えた方がよさそうです。
 写真をご覧になってください。左側が縄文時代早期の条痕文土器です。右側は弥生時代後期のハケ目調整が施された土器の破片です。ものにもよりますが、条の間隔がおおむね弥生時代の方が細かくなっています。お持ちの土器片はどちらに似ていますでしょうか?
 条痕は、貝殻の縁やを使ったり、棒や枝などを櫛(くし)状に束ねたもので付けたり、または板状や櫛状の道具で付けたりしたもので、よく観察すると1回で付けられた範囲(1単位といます)が分かります。条痕は繰り返して付けられているために、必ずと言っていいほど重なる部分がでてきます。この重なり方や粘土内に含まれている石の動きを観察することで、付けられた方向などが分かります。
また、土器に含まれていたガラス質のものは、色が透明であったのであれば石英(せきえい)の粒子の可能性が高いです。土器の粘土の中には、土器を焼くときに粘土の収縮率(しゅうしゅくりつ)を抑(おさ)えるためにさまざまな種類の混和剤(こんわざい)が入れられていますが、その中に含まれていたのが、ちょうど土器の表面に出ていたのですね。
 たった一つの小さな土器片でも、よく観察することでいろいろなことが分かります。分からない点がや疑問がありましたら、お尋ねください。ただし、今回のようにお話をうかがうだけで回答できるケースはあまり多くはありません(今回も確定的ではありませんしね)。土器や石器などの遺物は、そのものを直接見ることが重要です。そしてその出土状況などのデータを加えることではじめて遺物としての価値が出てくるのです。
ですから、遺物を見てもらいたいときには、ご面倒でも埋蔵文化財センターの方へ直接遺物をお持ちの上お尋ねください。

左 条痕文土器(縄文時代早期) 右 ハケ目調整土器(弥生時代後期)
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