整理・報告作業とは?
埋蔵文化財センターの仕事は、発掘調査だけではありません。出土した考古資料を整理・研究し、その成果を市民の皆さんや研究機関等に広く知っていただくため、発掘調査報告書を作成することも重要な仕事です。報告書が刊行されてはじめて、その遺跡の記録保存が完了することになります。考古資料に秘められた過去の歴史を知るためには大変な手間と時間・技術が必要です。しかし、そこから引き出される情報は、他からは決して得ることのできないものばかり。文字の残されていない大昔の歴史は考古資料からしか知ることができないのです。考古資料、すなわち埋蔵文化財が貴重である理由はここにあります。整理・報告作業は遠い過去の歴史を明らかにしていく過程にほかならず、その重要性は決して発掘調査に劣ることはありません。このページでは掘り出された考古資料をどのように処理して発掘調査報告書まで仕上げるのか縄文土器を中心に見ていきましょう。
遺跡から出土した遺物は,出土した遺跡や地点、種別ごとに分類されて遺物収納箱に収められ、収蔵庫で保管されております。遺物収納箱にはラベルが貼られ、一目でどの遺跡・遺構から出土したものか分かるようになっております。整理作業が始まると、土にまみれている遺物をまず水洗いします。
写真…遺物についている土を丁寧に洗います。
乾燥させたあとは、遺物に小さな字でそれが遺跡のどの地点から出土したのか分かるように注記していきます。
写真…遺物には全て遺跡名と出土地点を注記します。
注記の終わった遺物は机の上に広げられ、同じ個体のものを探してまとめていきます。同じ土器の破片が集まってきたら、どのような位置関係で接合するのかも検討します。
写真…同じ土器の破片を探して集め、接合する位置関係に並べます。
土器片は一つ一つ丁寧に接着剤で接合していきます。元通りの形に復元できるよう、歪まないように気をつけて接合していき、破片が失われている部分は石膏で埋めていきます。石膏部分に失われた破片の文様を彫って復元することもあります。
写真…土器片を接合し、失われた部分を石膏で補います。
これで縄文土器の復元が完成しました。白い石膏部分にはこの後絵の具などで色を塗ります。
写真…土器の復元が完了しました。
土器の破片は拓本(湿拓)で模様を写し取ります。拓本とは、和紙を湿らせて土器片に密着させ、その上から墨を打つ方法です。凹部は白いまま、凸部に墨がついていきます。また、土器片は断面図を書き、あとで拓本と合成します。土器片の厚さはキャリパーという道具で測り、断面の輪郭はマコと呼ばれる器具で写し取ります。
写真…土器片の模様は拓本で記録します。
遺物は寸分違わぬように測り、線画で図化していきます。
写真…石器の実測図です。
書き上がった土器・石器の実測図や発掘現場で記録した遺構の原図は製図用のペンで線の太さを変えながら綺麗にトレース(清書)します。このあと遺物は報告書用の写真撮影を行ないます。
写真…遺構や遺物の実測図は製図ペンで清書します。
次はトレースの済んだ実測図や拓本をレイアウトします。図を方眼に正確に合わせるため、下から光を当てて作業することもあります。番号や文字を貼り込んで、報告書用の図版原稿の完成です。あとは文字原稿を執筆し、編集作業を行って、発掘調査報告書のできあがりです。
写真…図版原稿が出来上がりました。
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