ためになる?豆知識

黄色いのに赤土?

 おなじみの関東ローム(層)は関東地方に広く分布しているロームで、第四紀(今から約180〜160万年から現在までの地質年代)の火山活動に由来している火山灰起源の赤土の総称として使われています。しかし、ロームというのは、本来土壌学で使用する粒径組成(土性)のひとつで、砂と粘土がほどほどに混じりあった粒径組成をもった土(壌土)のことをいい、火山灰の風化物といった成因(せいいん=できかた)とは無関係なのです。たまたま、関東地方に分布しているロームが火山灰の風化堆積物であったというだけで、ロームの成因には氷河堆積物や水の場合もあります。地質学の専門家でも混同してしまうことがあるようで、一般的な書物等で「ロームとは火山灰の風化物のこと」と誤った記載があってもある意味しょうがないのかもしれません。

 横浜が位置している南関東では、現在の地表に近い方から立川ローム、武蔵野ローム、下末吉ローム、多摩ロームといったように区分されています。このうち立川ローム、武蔵野ロームは新期ローム層と呼ばれ、富士山や箱根の火山活動で生じた火山灰が風化して形成されたものです。このうち、立川ロームは30,000年以降に形成されたもので、その上面は今から約12,000年前から15,000年前となります。この時期は縄文時代の草創期と呼ばれる時期に相当します。ですから、それより以前の旧石器時代の人たちが生活していた痕跡は、この立川ローム層のなかから見つかります。

 では本題に戻りますが、火山灰なのに何で赤っぽい色をしているでしょうか? 火山灰の「灰」は灰色の「灰」で、桜島や霧島新燃岳の噴火で火山灰が降灰したというニュースをみても、洗濯物や車に降り積もった火山灰は、白っぽい灰色や黒に近い灰色をしていました。どうして赤っぽく見えるのでしょうか。

 実は火山灰の中に鉄の成分が含まれているからなのです。この鉄分が酸化して(錆びて)赤っぽい色となっているのです。鉄錆ってどことなく赤いですものね。また、土器の表面につけられている赤い色の中には、べんがらといって鉄錆(第二酸化鉄)を用いて着色しているものもあります。ですから鉄の成分が含まれている土が赤っぽい色を呈していてもおかしくはないのです。
 ただ、ローム層は通称赤土といっても、実際には黄色みが強い色調(山吹色にちかいのかな?)をしています。私たちが小学生相手に発掘現場で説明する時には、赤土って言ってしまうと「赤くないじゃ〜ん!嘘つき〜!」と反撃をくらうことがあるので、黄色い土、やオレンジ色の土なんていう場合が結構あります。
写真は戸塚区舞岡町にある舞岡大原遺跡を調査した時の一枚です。中央のやや暗い部分が住居の跡で、その回りの黄色っぽい部分が関東ローム層となります。

 TBSがあることで知られる東京都港区にある赤坂というところには、地名の由来にはいくつかあるそうです。そのうちのひとつに、赤土がむき出しになっている坂で、滑って転ばないように警告する意味合いで付けられたという説があります。私たちも発掘調査をする際に、朝露などで湿っているロームで滑って転んでしまうことが結構あります。江戸時代に赤坂を通った人も露呈した関東ローム層で尻餅をついたのでしょうか?





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