ためになる?豆知識

なんと読むのでしょうか?

私たち埋蔵文化財センターに勤務している職員が使っている専門用語には、かなり独特なものが多く、専門であるはずの私たちでも読み方を誤ったり、忘れてしまうほど難しいものがあります。
では、次の言葉は何のことを示す用語でしょうか、考えてみてください。
1 短茎棘箆被腸抉両丸造長三角形式鉄鏃
2 三角板鋲留短甲と小札鋲留眉庇付冑

1 短茎棘箆被腸抉両丸造長三角形式鉄鏃(たんけいきょくのかつぎわたくりりょうまるづくりちょうさんかくけいしきてつぞく)
これは鉄で作られた鉄鏃(てつぞく=鉄で作られた矢じり)の形の説明ですが、読み方を表記してもよく分かりません。では、分解しながら解説してみましょう。
古墳時代に使われている鉄鏃の形にはいろいろな形があります。一般の人から見るとどれも同じような錆びている鉄鏃にしか見えませんが、よく観察するといろいろな部分の形が違っていることが分かります。
さて、先ほどの鉄鏃ですが、茎(なかご)と呼ばれる矢じりを柄に指すところの部分が短くて、箆被(のかつぎ)と呼ばれる茎と鏃身(ぞくしん=矢じりの先のものに刺さる部分)との間に棘(とげ)状の出っ張りがあって、刺さったときに抜けなくするための刺逆(かえり)という部分があり、その形が腸抉(わたくり)という形をしていて、鏃身の断面の形が両面とも丸みを帯びている長めの三角形をした鉄でできた矢じり。これだけ漢字が続くとお経のようにも見えるし、なんか知らないけど笑っちゃいます。

2 三角板鋲留短甲(さんかくいたびょうどめたんこう)と小札鋲留眉庇付冑(こざねびょうどめまびさしつきかぶと)
三角形を主体とした薄い鉄板を鉄製の鋲(びょう)で綴(と)じ合わせて作っている丈の短いサイズの甲(よろい=鎧)と小札(こざね)と呼ばれる小さな鉄板を鋲で綴じて作ったお椀状の鉢の前面部分に庇(ひさし)が取り付けられた冑(かぶと)のこと。

最初の鉄鏃については、漢字が一番続くものをあえて選んだため、実際の遺物は埋蔵文化財センターにはなく、写真も用意できませんでしたが、別の種類の鉄鏃の写真を参考に選んでみました。また、2番目に紹介した甲と胄は、現在横浜市歴史博物館に収蔵されている青葉区の朝光寺原1号墳から出土した遺物です。これらの遺物は横浜市指定文化財に登録されています。この古墳は古墳時代中期頃(五世紀中葉〜後半)に築造された墳径が約37mを測る円墳です。横浜市歴史博物館にいらした際にはこの話しを思い出してください。
*鉄鏃の名称・表現については現在のところ、統一されたものはありません。ここで紹介した名称も一部の研究者が用いている分類方法ですので、必ず使用している呼称とは限りません。ご了承ください。

 

左 朝光寺原1号墳出土三角板鋲留短甲と小札鋲留眉庇付冑  右 同古墳出土鉄鏃

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