横浜市歴史博物館

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企画展(アーカイブ)

特別展
中世よこはまの学僧 印融 戦国に生きた真言密教僧の足跡

町時代の後期、世の中がまさに戦国の世を迎えようとしている時、関東において著作活動と弟子の養成にまい進した印融という真言密教の学僧がいました。その遺業は後の世の人に、弘法大師空海の再来とまで称賛されるほどでした。
印融はたいへん読書を好み、外へ出かけるときにはいつも小牛に乗り、鞍には文卓をつけ、角には経巻をかかげ、お経を唱え、詩や歌を口ずさんでいたと言われています。
永享7年(1435)武蔵国久保(現在の横浜市緑区)に生まれたと伝えられる印融は、一説によれば、幼い頃より京都・奈良、さらには高野山にのぼり修行したとされます。しかし17、8歳の頃、三会寺(港北区鳥山町)の賢継の弟子となったようで、長禄4年(寛正元年・1460)には賢継より三会寺において醍醐三宝院流を伝授されます。また、文明13年(1481)までに、宝生寺(南区堀ノ内)の覚日などから西院流を伝授されます。
これ以降印融は、金沢光徳寺(金沢区)・榎木下観護寺(都筑区)・石川宝生寺などの他、柿生王禅寺(川崎市)・青梅即清寺(青梅市)など南関東の有力真言宗寺院で40人余の弟子に付法しました。この弟子達の中からは、天文13年(1544)に高野山金剛峰寺の第187代検校(けんぎょう)になった覚融のような僧侶も出ています。
印融の著作や写本は厖大かつ多彩で、真言密教の教相(教義)・事相(実践面)の著作はもとより、音韻学(おんいんがく)・梵語学(ぼんごがく)・漢詩論・密教図像学・辞書などの重要な著作・写本も多数残しています。そのなかでも晩年に著した『杣保隠遁鈔』(せんぼいんとんしょう)20巻は真言宗宗義の大成書とまで称され、代表的著作となっています。また、曼荼羅研究の必読書である『両部曼荼羅私鈔』(りょうぶまんだらししょう)は、明治時代にいたるまで版が重ねられてきたほどです。印融は永正16年(1519)8月15日に85歳で入滅しますが、その著作の数は60余といわれ、この時代にこれをしのぐ僧侶は見つかりません。 
この特別展は、学僧印融に関わる著作や写本、絵画・彫刻などを一堂に集め展覧します。そして、室町時代後期の関東の真言密教界において、印融の果たした役割について考えてみます。

展示構成

●構成●
金沢称名寺から鳥山三会寺に流れる醍醐三法院流と印融
鎌倉鶴岡八幡宮寺寿門の流れ高野山無量光院と印融
西院流石川宝生寺、金沢龍華寺・光徳寺と印融
印融の著作とその思想の展開                                                                                                                                               印融付法の弟子達への教育   

主な展示品

●主な展示資料●
絹本著色融辨和尚像〈龍華寺蔵〉室町時代
性霊集〈高野版・印融手沢本・京都総本山仁和寺蔵〉鎌倉時代
西院流印信〈印融自筆・龍華寺蔵〉室町時代
血脈類集記〈印融自筆・龍華寺蔵〉室町時代
塵袋〈印融自筆・東京国立博物館蔵〉室町時代
三宝院伝法灌頂三巻式〈印融自筆・高野山金剛三昧院蔵・高野山大学図書館寄託〉室町時代
韻鏡〈印融假名付本・宝生寺蔵〉室町時代
木造印融坐蔵〈観護寺蔵〉江戸時代
諸尊表白抄〈印融自筆・高野山釈迦文院蔵〉室町時代

開催概要

                                                                                                                                                                  ●主催●
横浜市歴史博物館 横浜市教育委員会
●入場料●
区分 料金
一 般 400円
高校生・大学生 200円
小学生・中学生 100円
※常設展との共通券、団体(20名以上)割引があります

関連事業

●講演会●
第一回11月9日(日)
坂本正仁氏(大正大学助教授)
「室町時代の関東における真言宗の展開」
第二回11月23日(日)
真鍋俊照氏(神奈川県立金沢文庫長)
「密教マンダラと美術」

展示図録

あり

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